日本全国の「海の駅」に関するデータを Wikidata に新たに登録しました。これにより、これまで Wikidata 上で 6件しか確認できなかった「海の駅」が、約200件 一挙に検索・再利用可能となりました。
この取り組みは、日本の海洋インフラに関する知識を、言語や分野を越えて共有できる形で Wikimedia プロジェクトに統合したものです。
LODチャレンジ2025で日本の「海の駅」をオープンデータとして整備した取り組みが、ウィキメディアのブログ Diff(日本語) で紹介されました。
「海の駅」とは?
「海の駅」は、海を起点とした人の往来と地域交流を支える拠点として整備された、日本独自の船舶係留施設です。単なるマリーナや港湾施設ではなく、海と陸をつなぐ「入り口」としての役割を担っています。
海側からは、プレジャーボートや小型船舶が安心して立ち寄れるビジターバースが用意されています。陸側からの来訪者も歓迎する開かれた施設として設計されています。多くの「海の駅」ではレンタルボートを備えており、船を所有していない人でも、釣りやクルージングといった海のアクティビティを体験することができます。
また、「海の駅」は船舶の係留にとどまらず、地域の魅力を体験する場としての機能も併せ持っています。海の幸を味わえる飲食施設、温泉や入浴施設、観光案内所などが併設されている例も多く、訪問者はその土地ならではの自然や文化に触れることができます。
「海の駅」は、航海・観光・地域振興を結びつけるハブとして位置づけられ、国土交通省によって登録・管理されている日本の船舶係留施設です。現在(2026年1月時点で)、180件の「海の駅」が指定されています。
分断されていた「海の駅」の情報
「海の駅」は、国土交通省により登録された日本の船舶係留施設であり、小型船舶の航行や地域観光、海洋レジャーを支える重要な拠点です。
一方で、「道の駅」のデータ登録は充実していましたが、「海の駅」の情報は各自治体や関連団体のウェブサイトに分散し、Wikidata では体系的に整理されていませんでした。結果として、
- Wikidata での検索結果はごく少数
- 他の港湾施設、フェリー、観光データとの接続が困難
- Wikimedia プロジェクト外での再利用ができない
という状態が続いていました。
データ構造
Wikidata 上では、各「海の駅」施設は次のような構造で登録されています。
| 項目 | 値・説明 |
|---|---|
| 分類(インスタンス of) | プロパティ P31(instance of)で、値に 海の駅 Q11558636 を指定 |
| 海の駅(概念) | Wikidata エンティティ Q11558636 |
| 道の駅(参考) | 海の駅と道の駅の両方に指定されている施設の検索に Q1187691 を使用 |
各施設の項目には、所在地(P131)、座標(P625)、公式サイト(P856)など、Wikidata の標準プロパティで追加情報が紐づけられています。
RDFデータ(umi-eki.rdf)の構造
当サイトで配布している umi-eki.rdf は、Turtle 形式の RDF です。廃止・休業を含む海の駅を約200件収録し、schema.org および WGS84 等の標準語彙と独自語彙で記述しています。
| プレフィックス | URI |
|---|---|
schema: | http://schema.org/ |
geo: | http://www.w3.org/2003/01/geo/wgs84_pos# |
:(独自) | https://linkingopendata.com/fune/umi-eki# |
rdfs: | http://www.w3.org/2000/01/rdf-schema# |
| プロパティ | 説明 |
|---|---|
schema:name | 海の駅の名称 |
schema:address | 住所 |
:prefecture | 都道府県 |
:region | 八地方区分(北海道地方など) |
schema:description | 説明(例:みなとオアシス、道の駅の有無など) |
geo:lat / geo:long | 緯度・経度(WGS84) |
:id / :number | 識別用ID・番号 |
:facilityName | 施設名(併設施設含む) |
schema:url | 公式サイト等のURL(複数可) |
schema:sameAs | Wikipedia・Wikidata等の同一資源(複数可) |
各施設は schema:TouristAttraction のインスタンスとして表現され、 subject は :station_XXXX(例: :station_0101)形式の IRI です。RDF形式のデータは以下のリンクからダウンロードできます。同一のRDFをブラウザ上でSPARQL検索するページも用意しています。
海の駅データ(umi-eki.rdf)をダウンロード 海の駅データをSPARQL検索
Wikidata への登録と分類の整理
2026年1月に行われた本件作業では、全国の「海の駅」約200件(廃業・休止中の施設も含めた履歴的データ)を Wikidata へ登録しました。あわせて、「海の駅」を 分類(concept) として明示的に扱うことで、SPARQL による横断検索が可能になっています。
「海の駅」を検索する SPARQL クエリ
現在、「海の駅」は以下の SPARQL クエリで取得できます。
SELECT DISTINCT ?item ?itemLabel WHERE {
SERVICE wikibase:label {
bd:serviceParam wikibase:language "[AUTO_LANGUAGE],mul,ja".
}
{
SELECT DISTINCT ?item WHERE {
?item p:P31 ?statement0.
?statement0 ps:P31 wd:Q11558636.
}
}
}
このクエリは、分類(P31)が「海の駅(Q11558636)」に該当する項目を抽出します。
SPARQL で確認できる「海の駅」の件数
Wikidata に登録された「海の駅」の件数は、SPARQL を用いて誰でも確認することができます。以下は、「海の駅(Q11558636)」を 分類(P31)として持つ項目数を集計するクエリです。
SELECT (COUNT(*) AS ?count)
WHERE {
?item wdt:P31 wd:Q11558636 .
}
このクエリを実行することで、現在 Wikidata に登録されている「海の駅」の総数を把握することができます。今回のデータ追加により、この件数は従来の6件から、約200件規模へと大きく増加しました。
クエリを試してみるには
SPARQL クエリは、Wikidata が提供する公式のクエリサービスから実行できます。
Wikidata クエリサービス Wikidata クエリビルダー(日本語UI)
また、SPARQL に慣れていない方でも、項目や条件を選択しながらクエリを組み立てられる クエリビルダー も用意されています。
(例)「海の駅」と「道の駅」の両方に指定されている施設
「海の駅(Q11558636)」にも指定されているし、「道の駅(Q1187691)」にも指定されている施設の一覧を取得するクエリです。
SELECT DISTINCT ?item ?itemLabel WHERE {
SERVICE wikibase:label { bd:serviceParam wikibase:language "[AUTO_LANGUAGE],mul,ja". }
{
SELECT DISTINCT ?item WHERE {
?item p:P31 ?statement0.
?statement0 ps:P31 wd:Q11558636. ?item p:P31 ?statement1. ?statement1 ps:P31 wd:Q1187691.
}
}
}
これらのツールを通じて、「海の駅」の一覧表示や地図化、他の港湾・観光データとの組み合わせなどを、誰でも自由に再利用・可視化することができます。「海の駅」をきっかけに、Wikidata への登録・編集や SPARQL クエリを試してみてはいかがでしょうか。また、データの先にある実際の場所として、最寄りの「海の駅」を訪れてみるのも一つの楽しみ方です。